映画話



CUBE 監督 - ビンチェンゾ・ナタリ / 1996年 カナダ / 91分 カラー
 第1回は個人的にNo.1の映画である『CUBE』を紹介してみようかと思います、はい。
 この映画は巨大なCUBEに閉じ込められてしまった6人の男女の話です。 巨大なCUBEと言っても、その内側は小さな(1辺6Mだったか)の立方体で構成されています。 あ、CUBE=立方体か。 んで、壁は部屋ごとに色分けされているわけです。 青だったり赤だったり、機械的な作りなのにその辺りは幻想的でもあります。 登場人物6人はいつの間にかそこに閉じ込められてしまって、当然のこととして脱出しようと試みるんですが、部屋にはトラップが仕掛けられていて、それを躱さなきゃならんのです。 ……まあ、部屋すべてに仕掛けられているわけではないので、部屋に入る前に察知できればいい。 それで彼らは試行錯誤しながら進んでいくんですが、やっぱり犠牲者は出るもの。 でも彼らは頑張るしかないわけで……。 後はネタバレなので避けます。 分かってると非常に面白みが薄れる映画なので。
 登場人物はレンが好きですねー。 この男、脱獄囚です。 トラップを見破る達人。 この男のアイディアは最後まで使われました。 あと……レヴンっていう女の子が可愛いです。 数学の天才。 これがどう活かされるのかは見て楽しんでください。 残りの4人も色々いて特技があったりしますが伏せておきます。
 最後に。 観れば観るほど考えさせられる映画です(私はね)。 そこで、この映画を深く観る為の方法の1つでも。 トラップで死ぬ人物と、それ以外で死ぬ人間の人数を確認しながら観るといいです。 あと、蛇足ですが、登場する人数は正確には7人です。 まあ、1人は冒頭だけなので省きました。 名前も出てないし。
 本当はもっと書きたいのですが、字数オーバーするので……。 そうそう、『CUBE』本編の後に『ELEVATED』って短編が入っています。 『CUBE』ほどではないですが、これも面白いです。 出演者は一緒。 そういや出演者ってみんな張り切ってるなぁ……。
<真取>

シャイニング 監督 - スタンリー・キューブリック / 1980年 アメリカ / 144分 カラー
 「恐怖」という感情には個人差があるわけでして、例えば『リング』を観て「超怖かった〜」とか言ってCMに出てる人もいれば、「けっ、つまんねぇの」と言ってさっさと映画館を出てしまう人もいるわけでして、普通の映画よりもお客さんの反応を得るのが難しくなっているわけです。
 で、今回紹介する『シャイニング』も公開当時は随分と煽られました。 「史上最恐のホラー」とか「今まで最も怖ろしい映画」みたいな感じでした。 今も昔も変わんないです、この辺りは。
 お話は単純。古いホテルに取り付いていた「お化け」に魅入られた旦那さん狂って、奥さんや息子を襲い出し、最後は自滅するというもの。 しかし、この在り来たりと思われる話を原作者スティーブン・キングがやると、霊に魅入られたために愛する者を傷付ける男の苦悩のドラマになるから不思議。 詰まるところ、原作者は幽霊屋敷の伝統に則って描かれた人間ドラマなわけです。
 しかし! これを映画化したのは幽霊の存在はおろか、人間ドラマにすら興味のない(作品が多い)スタンリー・キューブリック! しかも主人公役は、歯止めをかけないとどこまでも舞い上がる演技が売りのジャック・ニコルソン!! 結果、出来上がったのは、屋敷に来る前から狂っているとしか思えないニコちゃん(勝手に省略)が、小生意気なガキと顔の恐い奥さんをストレス発散のために散々虐めた挙句、やりすぎて殺されるという「幽霊どこ?」って感じの妙な映画なわけであります。
 これは監督のキューちゃん(省略)が「閉鎖空間に閉じ込められた人間はどうなるか」という、自分の現実的テーマを無理に推し進めた結果で、幽霊さんはおろかタイトル「シャイニング」の意味まで劇中ではまったく分からないというおまけ付き(何の?)。 原作者キングさんの怒髪天も当然と言えば当然です。
 とはいえ、見所がないかと言うとそうでもないのが映画の不思議。 前半に溢れる怪奇ムード(双子ちゃん恐っ!)、美しいビジュアル、移撮を多用し構図に凝った撮影までキューちゃん美学が貫かれており、一種のアートホラーになっています。 この点に浸って物語を無視すれば、そこそこ楽しめるかもしれません(ある意味恐いニコちゃんの演技もね)。
 ちなみに、この映画で本当に恐いのは、実は奥さんの想像を絶する絶叫顔と100kg近いカメラを背負って走り回ったカメラマンさんのその後だったりする。 その意味は……映画を観れば分かります……。
<しろあり>

死の王 監督 - ユルグ・ブットゲライト / 1989年 ドイツ / 80分 カラー
 突然ですが、ホラーというジャンルにも色々あるわけで、スプラッターだったりオカルトだったりモンスターパニックだったり……。 そんな中、この『死の王』は大抵のビデオショップではホラーに分類されているんですが、内容はホラーとは言えない(個人的には)ものなんです。 ……カルトに分類してる店もあるなぁ。 それを紹介しようってわけです。 ユルグ監督は、あの『ネクロマンティック』の監督さんです……。
 パッケージを見ると、「今世紀、もはやこれ以上危険な映画は生まれない」とか書かれてますが、まあそんなことはどうでもいいです。 で、ストーリーなんですが……はっきり言って、そんなものは存在しません。 とか言うとダメ映画みたいですが、この映画は「月曜日」から「日曜日」にかけて、1日1日、別の話が進んでいきます。 1週間に渡って映される様々な自殺者の話。 そして、その1日毎の間に映る1人の男の死体が腐敗していく様は何とも退廃感に溢れています。 では、ちょっとネタバレになりますが、月曜日の話をしてみることにします。
 1人の男が睡眠薬だと思われる薬(はっきりとは分かりません)を10錠くらい飲んでバスタブで自殺します。きっと、眠った後で溺死できるようにバスタブを選んだのでしょう。 この男は死ぬ前に友人・知人に手紙を書いています。 火曜日の話から考えて、自殺することを連絡したのでしょう。 月曜日に関するストーリーはこれだけです。 月曜日の前半はカメラを中央に置いてゆっくり回転させる、という撮影方法でしたが、これは男が時々映って時間の流れを表していると思います(どうでもいいか)。
 火曜日には月曜日の男が出した手紙を受け取った男が登場です。 ビデオドローム(クローネンバーグ監督の映画のタイトルと同じ名前ですねぇ)というビデオレンタルショップでその封を開けて、店主に「あいつ自殺したらしいぞ」と言ったりして、ビデオを借りてゆきます。 この後に「痛い」描写がありますが、そんなのはこの映画の軸ではないので割愛。 ……まあ、この後は観て確認して下さい。
 ところで、映画自体はグロ系統になるのかもしれませんが、この映画は「死」の美しさ、「死」の虚無感などを表現していると思います。 監督自身は「死」について結構真剣に考えていると思うわけです。 「死」には「救い」などない、「死」は「無」に還ることなのだ……と私は考えたり。 何となく癒されてしまう。 「死の安らぎ」を感じるからなのか。
 関係ないですが、ユルグ監督、意外と男前です。 『シュラム』のメイキングで見たんですが。 ともかく、万人にお勧めできる映画ではありませんが、一度は観て欲しい映画です。
<真取>

サイコ 監督 - アルフレッド・ヒッチコック / 1960年 アメリカ / 80分 カラー
 今では「サイコ犯」なんて言葉が普通に使われているし、小説どころか実際に起きた事件にも「サイコ」という言葉がポンポン飛び交っておりますが、その機嫌になったのは、たった1本の映画、アルフレッド・ヒッチコックの監督の60年作品『サイコ』であります。
 この映画のストーリーはしごく単純。 恋人の為に会社の金を盗んだ女性マリオンの逃避行……え? 単純過ぎですって。 いや、これから先は本当に言えないんですよ。 この映画、前知識なしで観ると心底驚く「仕掛け」があるのです。 私の弟など小学生の頃にこれを観て、マジで椅子の上で飛び上がっておりました(その後、半ベソかいて寝られないとなじられた)。
 まあ、敢えて言うなら、この映画の凄いところは、それまで映画にあった「主人公が1人(もしくは2人)いて、その人物を中心に物語が組まれる」という法則を完全に無視した点でしょう。 当時の観客のショックは相当なものだったようで、『サイコ』は実はTVドラマ並みの予算で撮られたにもかかわらず、、その年の年間ランキング3位に入る大ヒット。 その後も多くの亜流映画を生み出すことになり、果てはスプラッターという血飛沫バンバン映画(『13日の金曜日』とかね)のジャンルも作ってしまうという不名誉(?)まで付いてくるわけですが、とにかく与えられた影響は尋常ではなかったわけです。 未だにこの映画のパロディはあちこちで氾濫しております(最近だとアメリカ版『リング』とかですかね)。
 ここからは映画を観た人限定で……。
 今観ると強引なラストの二重人格オチやテンポのユルさから、かったるいだけのサイコサスペンスだと思う人もいるかもしれません。 そういう方はこの映画を一種の「ホラー映画」だと考えて、もう一度観直してみて下さい。 ヒロインがモーテルに着いてから急速に盛り上がる不穏なムード(人物の陰のあるアップと動物の剥製の使い方に注目!)から怪奇色の強い後半まで、まったく別の観方が出来るかもしれません。 ラストも、考え方によっては「幽霊に魅入られた男の悲劇」と取れなくもない点に注目。 構図の冴えまくるシャワーシーン(当時はヌードで乳房すら見せられなかった)に興味が集まりがちな映画ですが、実に見所の多い、凝った映画でもあるのです。
<しろあり>

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